相続、贈与のときの非上場株式の評価のルールは、国税庁の財産評価基本通達で定められています。財産評価基本通達では、評価対象会社の規模や株主の状況によって、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、配当還元方式の3つが定められています。
類似業種比準価額方式は、どのような評価方法で、どのような特徴があるのでしょうか。実際の詳細な計算や通達の解釈では多くの複雑な部分がありますが、ここではある程度簡素にご説明いたします。
類似業種比準価額方式とは
国税庁の財産評価基本通達では、相続、贈与のときに支配力の影響が大きい同族株主が保有する会社を評価する場合の原則的評価方式として、類似業種比準価額方式と純資産価額方式と両者の併用方式を定めています。
このうち類似業種比準価額方式とは、対象会社と事業内容が類似した上場会社の株価を参考にして、配当、利益、純資産、斟酌率から評価額を算定する方法です。
類似業種比準価額方式による計算について
計算式
1株当たり評価額 = A × {( b / B + c / C+ d / D)/3} × 斟酌率
「A」類似業種の株価
「b」対象会社の1株当たりの配当金額
「c」対象会社の1株当たりの利益金額
「d」対象会社の1株当たりの純資産価額
「B」類似業種の1株当たりの配当金額
「C」類似業種の1株当たりの利益金額
「D」類似業種の1株当たりの純資産価額
手順
1 類似業種の業種目の判定
総務省が公開する「日本標準産業分類」を参考にして、国税庁が公開する「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表」が定める業種目のどこに該当するのか判定します。
2 類似業種の4つの要素 (A、B、C、D)
国税庁が公開する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」に基づいて、「類似業種の株価」、「類似業種の1株当たり配当金額」、「類似業種の1株当たり年利益金額」、「類似業種の1株当たり純資産価額」の類似業種の4つの要素を上記の計算式A、B、C、Dにあてはめます。
3 対象会社の3つの比準要素 ( b , c , d )
対象会社の直近の決算数値及び株式数に基づいて、「対象会社の1株当たり配当金額」、「対象会社の1株当たり年利益金額」、「対象会社の1株当たり純資産価額」の対象会社の3つの比準要素を上記の計算式b、c、dにあてはめます。
4 斟酌率、類似業種比準価額の算定
上記で確認した数値を用いて類似業種比準価額を算定します。斟酌率は、対象会社の規模により、大会社0.7、中会社0.6、小会社0.5とします。
特定の評価会社
保有する資産や営業活動の状況が著しく異なる会社の株式を一般の対象会社と同じように評価することでは合理的ではないため、財産評価基本通達では下記の6種類の会社を特定の評価会社と定めています。これら特定の評価会社は、類似業種比準方式の使用が制限され、多くの場合は純資産価額方式を中心とした評価になります。
- 比準要素数1の会社(例:赤字で無配当の会社)
- 株式等保有特定会社(例:株を持つことだけが目的の会社)
- 土地保有特定会社(例:土地を持つことだけが目的の会社)
- 開業後3年未満の会社・比準要素数0の会社(例:債務超過の会社)
- 開業前・休業中の会社
- 清算中の会社
類似業種比準価額方式の特徴
- 類似業種比準価額方式は、相続税、贈与税を計算するための評価方法です。対象会社の実態を勘案した企業評価ではないため、一般的には、この方式を税金計算以外の他の目的で利用することは理論的ではありません。
- 一概には言えませんが、類似業種比準価額方式は純資産価額方式と比較して、株式の評価額が低くなる傾向にあります。
- 類似業種比準価額方式による株式の評価額は、対象会社の配当や利益などの業績によって変動します。対象会社の「1株当たり配当金額」、「1株当たり利益金額」、「1株当たり純資産価額」が低くなれば、上記の計算式に基づいて、対象会社の株式の評価額が低くなります。
まとめ
類似業種比準価額方式は、財産評価基本通達に定められた税金計算のための評価方法です。手順に沿って進めていけば計算結果にたどり着くものではありますが、実際はこの過程に複雑なところも多く、オーナー社長が自社の評価額について課題を抱えている場合もあります。
株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたらご相談ください。