非上場会社の事業価値や企業価値をめぐって争いが生じることがあります。案件の状況によっては、当事者間での話し合いで解決できず、弁護士、法律事務所が入って話を取りまとめに尽力することもあり、係争、訴訟、裁判に発展することもあります。会社の株価算定を専門家に依頼する場合について、概略を下記でご説明いたします。
弁護士、法律事務所が関与している案件で株価算定を専門家へ依頼する背景
非上場会社の株式や事業を譲渡する時に、譲渡価額の妥当性が問題になる場合があります。当事者間の協議で話がまとまらず、弁護士、法律事務所が関与する場合には、裁判を想定し、裁判上の公正な価格や近似した案件の判例が検討されます。
上場会社なら証券市場の相場で株価が示されていますが、非上場会社には客観的な市場価格が無いので、専門家へ対象会社の事業価値や企業価値の検討と株価算定書の提示を依頼します。
弁護士、法律事務所が関与している案件でなぜ株価算定が必要になるのか
非上場会社の株式や事業の譲渡価額で争いが生じ、弁護士、法律事務所が関与しているような時点では、当事者間での話し合いで解決ができない状態にあります。
仮に裁判になった場合は、依頼者側としては、自身が主張する企業価値や事業価値について、具体的な金額と論拠を説明するために文書を提出します。この文書は、依頼者側と依頼者側の弁護人だけではなく、相手側、相手側の弁護人、裁判所に提出され、会社法に照らして裁判上の公正な価格が検討されることになります。
評価の対象会社から独立した第三者の専門家に依頼して、対象会社の公正な株価を記載した株価算定書を入手することが必要になります。
なお、裁判では弁護人となる弁護士、法律事務所が中心となって進めることから、株価算定を依頼した専門家との間では意思疎通を図りつつ連携して取り組んでいくことが必要です。
弁護士、法律事務所が関与している案件でどのような株価算定書が必要か
株価算定書は、株価算定の専門家が、企業から独立した第三者の立場から、対象会社の株価の評価額、評価手法、計算過程について記載した文書です。
株価算定は、案件によって、対象会社の経営状況も株価算定を必要とする背景も異なりますが、株価算定書の記載項目はある程度定型化されます。
弁護士、法律事務所が関与しており裁判を想定するような場合は、依頼者側ばかりでなく相手側や裁判所も株価算定書を査閲します。複数の株価算定の手法からどの手法を採択したか、また、その理由、がどのように記載されているかは重要です。
下記の項目が記載されている株価算定書を入手することが必要です。
- 対象会社の概要(会社の商号、事業内容、役員、株主)
- 株価算定の目的
- 株価算定の基準日
- 責任限定事項
- 株価算定についての概要(株価算定の各手法の説明、対象会社の経営状況、株価算定で用いる手法の検討、対象会社の株価の計算過程、結論すなわち1株当たりの評価額)
弁護士、法律事務所が関与している案件における株価算定の評価手法について
そもそもの株価算定自体、事案の背景や対象会社の経営状況などを勘案して、個々の事案別に行われるものです。
特に、弁護士、法律事務所が関与する案件では、裁判で通用するレベルの株価算定書を提示することが必要です。
複数の株価算定の評価手法から採択する評価手法について、これまでに裁判で採用されたことがある評価手法かどうか検討することが必要です。
例えば、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)、収益還元法、時価純資産法、配当還元法、類似会社比準法は、過去の判例に示されており、これまでに裁判で採用されたことがあります。このうち、単独の評価手法を適用する場合もあれば、複数の評価手法を併用又は折衷する場合もあります。
しかし、例えば、EBITDAを用いた評価手法、年買法(年倍法)による評価手法は、実務的に利用される場合はあるのですが、一般的には裁判で通用しない評価手法です。
弁護士、法律事務所が関与している案件での株価算定の報酬
株価算定の報酬は、案件によっても、また依頼先によってもある程度の開きがあり、数十万円の場合もあれば数百万円の場合もあります。
株価算定の料金は、株価算定の目的、対象企業の状況や特性、計算の複雑性などによって異なるので一概に言いきれないものですが、弊社では、裁判目的であれば、評価対象が年商10億円以下の中小企業の場合、100万円(消費税別)を目安としています。
弁護士、法律事務所が関与している案件での株価算定について概略を相談する場合
株価算定を専門家へ依頼することを検討する際、事前に株価算定の過程や結果を可能な限り把握しておきたい、という場合があります。
仮に、株価算定を依頼すれば、どのような評価手法を選択し、最終の評価額がいくらになるのか、など、ある程度株価算定の方向性や結果の概略を知っておきたいという場合です。
弊社では、事前に問合せいただければ、可能な範囲で回答します。株価算定を必要とする理由や案件の背景の他に、対象会社の経営状況をお聞かせいただければ、どのような評価手法で、評価額がどう算定されるのか、また、必要な資料や納期についても、可能な範囲でご説明いたします。
弁護士、法律事務所が関与している案件ではどのようなところに株価算定を依頼すべきか
株価算定を依頼する場合は、公認会計士と税理士の資格を保有しており、株価算定の専門知識やノウハウを保持している専門家に依頼すべきです。
株価算定には複数の評価手法があり、案件に特有の背景事情や、評価対象会社の経営状況を勘案したうえで、適切な手法を選択して計算過程と最終結論を文書化します。株価算定は、定められた計算式に数字をあてはめれば簡単に出来るというわけでなく、専門知識やノウハウがないと出来ません。
公認会計士と税理士の資格と、株価算定の専門知識やノウハウを保有している専門家に依頼し、重大な失敗が起こらないようにすべきです。
まとめ
非上場会社の事業価値や企業価値をめぐって争いが生じ、弁護士、法律事務所が関与し、専門家に株価算定を依頼する場合があります。
裁判を想定したうえで依頼者側が主張する企業価値や事業価値の金額と論拠を説明できるようにするためには、公認会計士と税理士の資格と、株価算定の専門知識やノウハウを持った専門家に株価算定を依頼して、対象会社の株価の評価額、評価手法、計算過程を記載した株価算定書を文書で入手することをご検討ください。
株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。