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収益還元方式を用いた株価算定の裁判例(旧DC社案件)

収益還元方式は、インカム・アプローチに分類される株価算定の方法です。インカム・アプローチには、他にもDCF法、配当還元方式がありますが、どのような場合に収益還元方式が採用されるのでしょうか。今回は、収益還元方式による評価が妥当とされた裁判例として、旧DC社案件についてご紹介します。

旧DC社案件の概略

旧DC社は、デジタルコンテンツ配信事業を行う非上場会社でした。旧DC社は平成14年9月から事業を開始し、平成18年3月期及び平成19年3月期は業績が伸びていました。

旧DC社の株主構成は、Xが60%、Cが40%という状態だったところから、Cは保有する全株式を譲渡しようとしました。平成19年3月、Cは書面で株式譲渡の承認を旧DC社へ請求しましたが、旧DC社は承認せず、Xを買受人に指定した結果、Xが100%の株式を保有することになりました。XとCとの間で買取価格が合意に至らず、裁判所に買取価格の決定を求めました。

会社法第144条第2項では、Cのような株式譲渡の承認請求者と、旧DC社のような会社側との間で買取価格について協議がまとまらない場合を想定して、裁判所に買取価格の決定を申し立てることができる、と定めています。

裁判所は、収益還元方式によって評価することが相当であるとして、平成20年4月4日に決定しました。

旧DC社案件における、裁判所の見解について

旧DC社案件における裁判所の見解は、下記の通りです。

・旧DC社は、これまで配当を行ったことがなく、将来においても配当を行う予定がないため、配当還元方式を採用することは合理的ではない。

・旧DCの経営権は60%の株式を保有するXが有しているが、40%を保有するCは株主総会の特別決議に反対することができるので旧DC社の経営には一定の影響を及ぼしていた。CからXへ株式が移動すればXは旧DC社を完全に支配できることになり、これは経営権の移動に準じて純資産方式、収益還元方式を検討すべきである。

・旧DC社には含み益のある不動産のような資産が存在しない。また、旧DC社は、ベンチャー企業としての成長力が大きく今後の事業の発展によって前期及び前々期と同程度の利益が見込まれる。こうした旧DC社の状況を考慮すれば、純資産方式による評価では過小になってしまうため、収益還元方式で評価するのが妥当である。

まとめ

会社の株式の価値が争点となった裁判例として、旧DC社案件についてご紹介しました。

今回ご紹介した旧DC社は、ベンチャー企業で成長力は有る、配当は過去の実績も今後の予定も無い、特筆すべき資産の含み益は無いもないというところが特徴です。こうした特徴を考慮して株価算定を行うとすれば、配当還元方式も純資産方式も合理的ではなく、収益還元方式が合理的と考えられます。

裁判に発展した場合、より合理的な株価算定を行うには、専門的な知識が求められます。株価算定は複雑なため、一夜漬けでは対応が難しいでしょう。実績のある当社では、高い専門性を持って対応しております。疑問点などございましたらお問い合わせフォームよりご相談ください。

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