株価算定にあたり、適切な評価方法は、どのように選定すべきなのでしょうか。一般的な特徴はあるのですが、答えは、「案件ごとに異なる」です。
まずは一般的な特徴を踏まえてどのような方法が最善なのかを検討し、最終段階で総合評価を行います。日本公認会計士協会から公表されているガイドラインを考慮し、ポイントを解説します。
一般的な特徴
株価算定の評価アプローチには、下記のような特徴があります。それぞれの評価アプローチをどのような場合に利用するのか、いうことは、一概に言えるものではなく、評価の目的との関係や、対象会社の環境や特性その他の要素を勘案して、最も適切な評価アプローチを選択する必要があります。
- マーケット・アプローチとネットアセット・アプローチは、市場価格や純資産といった客観的な数値や前提条件に基づいた評価を行うことができる。
- マーケット・アプローチは、他の上場している同業他社や類似取引事例など市場での取引環境を反映した評価が行うことができる。
- インカム・アプローチは、将来の評価対象会社に期待される収益獲得能力を反映した評価を行うことができる。
- また、インカム・アプローチは、評価対象会社独自の収益性等に基づき、評価対象会社固有の定性的な性質を反映した評価を行うことができる。
客観的な評価 | 市場環境の反映 | 将来収益獲得能力の反映 | 定性的な評価 | |
インカム・アプローチ | 可能 | 可能 | ||
マーケット・アプローチ | 可能 | 可能 | ||
ネットアセット・アプローチ | 可能 |
適切な評価アプローチを選択するにあたって留意すべき事項はありますが、具体例は次回のブログで記載します。
総合評価
最終的な評価額の算定では、単独又は複数の評価法に基づいて総合評価を行います。
総合評価には、単独の評価法を適用する単独法、複数の評価法の結果の重複を考慮する併用法、複数の評価法の結果の加重平均を用いる折衷法、の3つがあります。
これまでの裁判の判決で採用された株価算定の方法を見れば、単独の評価法を適用する場合もあれば、複数の評価法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)と時価純資産法など)を適用してそれぞれの評価結果に一定の割合(1対1、7対3など)を適用する場合もあります。
まとめ
株価算定の適切な方法を選択するためには、インカム・アプローチとマーケット・アプローチとネットアセット・アプローチの一般的な特徴を踏まえ、評価対象の企業を多面的な角度から分析、検討し、総合的な判断結果として、適切な評価方法を選択しますので、「案件ごとに異なる」というものです。
M&Aや事業承継、株価に関する裁判や係争問題、経営戦略の検討など、重要な場面で株価算定が行われることがあります。
株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。