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ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)の割引率について

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)では、将来のフリー・キャッシュ・フローを現在価値に割り引いて株価算定を行います。現在価値に割り引くときの割引率は、一般的にはWACC(加重平均資本コスト)が利用されますが、どうやって計算するのでしょうか。

割引率として利用されるWACC(加重平均資本コスト)の定義、計算式

WACC(加重平均資本コスト)とは、企業全体での資金調達コストを表す指標であり、負債コストと株主資本コストの加重平均値です。

 WACC(加重平均資本コスト) = 株主資本コスト × 資本の構成割合 + 負債コスト × 負債の構成割合

割引率としてWACC(加重平均資本コスト)が利用される理由

企業が資金調達する一般的な手段は、返済義務のある負債、返済義務のない株式、の2つです。

WACC(加重平均資本コスト)による資金調達コストの計算は、負債コストと資本コストに分けて行われます。

WACC(加重平均資本コスト)を利用することによって、調達する資金の返済義務の有無を区分した計算ができるので、割引率としてWACCが利用されます。

割引率として利用されるWACC(加重平均資本コスト)を構成する負債コスト

負債コストは、銀行や債権者からの借入で発生する資金調達コストです。

負債コストは基本的には企業が負っている負債の利率ですが、支払利息は通常は税務上損金として税金を引き下げる効果があるため、以下のように計算します。

 負債コスト = 負債の利率 × ( 1 - 実効税率 )

計算式の実効税率とは、利益に対して会社が負担する税金の割合であり、日本の企業では2~30%が目安です。

割引率として利用されるWACC(加重平均資本コスト)を構成する株主資本コスト

株主資本コストは、株主(投資家)からの投資で発生する資金調達コストです。

株主資本コストを算出する理論の一つにCAPM(資本資産評価モデル)があり、これは、特定の株式に投資した株主が期待する利回りを示すものです。

CAPM(資本資産評価モデル)にもとづいた株主資本コストは、以下のように計算します。

 株主資本コスト = リスクフリーレート + β × リスクプレミアム 

リスクフリーレートとは、リスクが無い資産から得ることができる期待利回りです。長期国債の利回りを利用する場合があります。

βとは、株式市場の利回りの変化に対する特定の株式の利回りの変化の率です。事業が類似した上場会社のβを利用する場合があります。

リスクプレミアムとは、株式市場全体の期待利回りとリスクが無い資産(リスクフリーレート)の期待利回りの差額です。株式市場全体の期待利回りとしてTOPIXの利回りを、リスクが無い資産の期待利回りとして長期国債の利回りを利用する場合があります。

割引率として利用されるWACC(加重平均資本コスト)の資本と負債の構成割合

WACC(加重平均資本コスト)は対象会社の全存続期間を通じて適用される割引率であるため、対象会社が長期的に維持しうる資本構成とするのが理論的です。

具体的には、事業が類似した上場会社の資本構成の平均値の割合、評価対象会社の直近時点での資本構成の割合、を利用する場合があります。

まとめ

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)における割引率として、一般的に利用されるWACC(加重平均資本コスト)をご紹介いたしました。

具体的な計算を行うためにはデータ集めが必要で、手間はかかります。また、計算過程や論理が複雑なところもあり、専門家によって見解が異なる場合もあります。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)は株価算定の方法としてよく利用されますが、複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたらご相談ください。

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