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【株価算定事例】経営再建取組中の会社のディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価

M&Aや事業承継、株価に関する裁判や係争問題、経営戦略の検討など、重要な場面で株価算定が行われることがあります。弊社がこれまでに裁判目的や同族間での株式譲渡取引などの株価算定の業務を受嘱し、株価算定書を作成・提出した中から事例をご紹介いたします。守秘義務等の関係で、固有名詞を伏せて要旨を簡潔に記載しますが、ご了承ください。

株価算定の業務の依頼の背景

グループ内の会社を再編するにあたっての株価算定のご依頼を受けました。

対象の会社は比較的業歴の長い製造業で、もともとは業績が安定していたのですが、多くの取引先の事業拠点が海外へ移管して日本国内の顧客が減少し、経営環境が厳しくなりました。評価時点の約5年前までは売上高は約100億円である程度の利益を出しながら簿価純資産は約100億円あったのですが、以降は売上高が約10億円減少して営業損失が約10億円という業績が何年か続き、簿価純資産は大幅に減少しました。

今後も厳しい経営環境が続くことが想定されますが、過去の信用、実績、ノウハウの強みを活かしつつ、経営の改善に取り組んでいます。

対象会社は経営再建計画を打ち立てて赤字体質から転換すべく構造改革に着手しており、この計画に基づいて翌々年からの黒字化を図っています。

採択した評価方法と株価評価の結論

対象会社の経営再建計画を慎重に検討した結果、事業拠点の集約、人件費等の固定費削減、受注時点での採算を判断した選別など具体的な検討が示されているものの、そもそも毎年約10億円の営業損失を出している体質を短期間で改善して翌々年から黒字化というのは現実的ではないという印象を持ちました。そもそもこの計画自体が、今後の業績の予想数値というよりも会社の業績の目標数値という意味合いのほうが強いということもあり、経営再建計画を補正すべきと考えました。

株価算定の評価方法としては、対象会社の将来の業績見通しに基づいた評価を行なうという点で、インカム・アプローチのうち、ディスカウント・キャッシュ・フロー法を採用することが妥当と考えました。時価純資産法は一般的に企業の実態価値を示すとは言うものの、本件の場合は直近の赤字の大きさが純資産の減少に影響を及ぼしており、仮に時価純資産を出したところで単なる一定時点での評価にしかならないと考えました。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価

当初の対象会社の経営再建計画から、売上高の今後の減少見込み、採算の改善見込み、経費削減の見込みなど多岐にわたって数値を補正しました。補正した計画に基づいて、今後の各年度のフリー・キャッシュ・フローを計算しました。フリー・キャッシュ・フローを現在価値に算定するための割引率として負債コストと株主資本コストの加重平均資本コストを利用し、対象会社の非事業用資産及び有利子負債を考慮して、1株当たり評価額を算定しました。

まとめ

今回の案件では、経営再建に取り組んでいる会社の株価算定をご紹介しました。時価純資産法では単なる一定時点での評価にしかならないことを勘案し、補正した経営再建計画に基づいたディスカウント・キャッシュ・フロー法で計算した株価算定書を提出しました。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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