株価算定の目安を知るために、インターネット上でシミュレーションできるサイトが見られます。案件ごとに条件が異なるなか、どのような形でシミュレーションできるのでしょうか。その正確性や、裁判で使えるかどうかをお伝えします。
株価算定のシミュレーションの意義、必要性
M&Aや事業承継、増資の検討、株式譲渡時の価格交渉などを行うときには、自社の企業価値を把握しておく必要があります。
ここで仮に、専門家に対して株価算定の業務を正規に依頼するとなれば、資料や情報を提示し、文書で株価算定書を受領し、ある程度の報酬がかかります。ここまでせず、時間とコストをかけずに簡易な計算を行って目安の概略を知っておきたい、参考程度で構わない、という場合に株価算定のシミュレーションが行われます。
シミュレーションの概要
さて、株価算定のシミュレーションは、どのようにして行われるのでしょうか。そもそも株価算定自体が案件ごとに異なるので、シミュレーションとはいっても株価算定の目的や対象会社の状況によって計算の方法や内容は違ってきます。定型化しづらいものですが、あえて例を示すとしたら下記のとおりです。
例1 時価純資産法による株価算定のシミュレーション
対象会社の直近の決算書の簿価純資産に、含み損益を加減算して、調整後の時価純資産を簡易に計算します。
例2 ディスカウント・キャッシュ・フロー法による株価算定のシミュレーショ
対象会社の今後の各年度のキャッシュ・フローの見込み、現在の価値に引き直すために使用する割引率などの数値を仮定して、簡易に計算します。
例3 M&Aの時の株価算定のシミュレーション
対象会社の決算書から時価純資産と営業利益の状況を読み取って、譲渡価額の目安を簡易に計算します。
例4 相続や贈与の時の株価算定のシミュレーション
相続や贈与の場合は、国税庁の定める計算式に従い、対象会社の財務数値、株式の状況、従業員の状況に基づいて評価額を計算します。
シミュレーションで正確な株価算定ができるのかどうか
株価算定のシミュレーションでは、正確性や信憑性といった計算の精度を高めるというよりも、時間とコストをかけずに簡易な計算で概要を把握することを目的としています。およその目安をつかむことができますし、概ね正確な結果が出る場合もあるのですが、丁寧な計算を行っているわけではありません。例えば、時価純資産法での含み損益の検討が不十分だったり、ディスカウント・キャッシュ・フロー法で用いる割引率の検討が不十分だったり、ということがありえます。また、複数の評価法を考慮した折衷法による場合は、その折衷の割合も含めたシミュレート計算を行うのは非常に難しいといえます。
シミュレーションの結果を裁判で使えるのかどうか
裁判が絡んでくると、文書としての株価算定書が必要ですし、なぜその評価法を選択したのかという論理も必要ですし、計算の正確性も要求されます。簡易な計算を行った株価算定のシミュレーションの結果を裁判で使っても、基本的には通用しないと考えられます。
まとめ
自社の企業価値を把握するにあたり、あくまでも参考として利用するつもりならば、株価算定のシミュレーションを行う意義はあると考えます。シミュレーションは、状況次第で自社で又はご自身で行うことは可能ですし、顧問の事務所や金融機関が無料又は低額で行う場合もあります。もし、弊社に対象会社の直近の決算書を持参のうえで経営の状況をヒアリングさせていただければ、多くの場合、ほぼ、その場で評価額の目安を回答することができます。株価算定のシミュレーションは定型化しにくいので、サイト上でのシミュレーションのコーナーの設置、ツールの紹介、ということは行っていません。
M&Aや事業承継、株価に関する裁判や係争問題、経営戦略の検討など、重要な場面で株価算定が行われることがあります。株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。