非上場会社の株価算定は、なぜ必要になるのでしょうか、また、どんな時に必要になるのでしょうか。下記で解説いたします。
非上場会社の株価算定が必要になる背景
上場会社であれば、証券取引所で会社の株式が売買されており、客観的な市場価格となる株価があります。しかし非上場会社には客観的な市場価格がないので、いざ非上場会社の株式を売買するとなれば、いくらで取引すればよいのかという問題になり、会社の株式の価値を計算すること、すばわち、株価算定が必要になります。株価算定は複雑で専門性が高く、また公平性が求められるので、第三者的な立場の専門家に依頼することになります。
非上場会社の株価算定が必要になる場合
上記の非上場会社の株式を売買とは一例であり、非上場会社が下記のような局面になれば株価算定を行うことが必要になってきます。
例1 増資
会社が増資する場合、新しい株主が引き受ける株価が高すぎたり低すぎたりすれば、新しい株主と既存の株主との間に不公平が生じてしまいます。また、税務上の時価よりも低い株価で株式を引き受けることで、税務上の問題が生じる可能性に留意が必要です。ここで、専門家による増資の株価算定が必要となる場合があります。増資の株価算定の評価方法は、案件の特有の事情や対象会社の状況によるため、一概に示すことはできません。
例2 裁判
非上場会社の株価が争点になり、弁護士が関与し、裁判に絡んでいくような案件の場合は、株価算定の評価方法の採択理由、評価額を記載した文書として株価算定書を提示することが必要となります。裁判所は対象会社の公正な価格を検討し、また、裁判の関係者が査閲することが想定されます。裁判における株価算定の評価方法は、案件の特有の事情や対象会社の状況によるため、一概に示すことはできません。
例3 相続税の申告
会社の株式が相続財産に含まれる場合は、国税庁が公表する財産評価基本通達に基づき、株価算定を行って相続税を申告します。上場会社の株式なら証券取引所の株価に基づいて評価額を計算しますが、非上場会社の株式なら対象会社を大会社、中会社、小会社のいずれかに区分して類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式で評価額を計算します。
例4 少数株主からの買い取り
少数株主が支配株主に対して非上場会社の株式の買い取りを依頼する場合、株価は基本的には双方の交渉を経て合意に至ります。買い手側の支配株主が国税庁の財産評価基本通達を根拠に低い金額で提示し、売り手側の少数株主がディスカウント・キャッシュ・フロー法や時価純資産法を根拠に高い金額で提示することがあります。国税庁の評価方式は会社の実態価値と乖離することがあるので双方の交渉が容易に進むとは限らないので、評価方法の論理や評価額を整理するために専門家に株価算定を依頼する場合があります。
例5 M&A
M&Aで非上場会社の株式を譲渡する場合、譲渡価額は基本的には売り手と買い手の交渉を経て合意に至ります。対象会社の株式の評価額として、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチを利用する場合もありますが、時価純資産にのれん代として営業利益の数年分を加算した金額とする場合もあります。対象会社の譲渡価額は売り手と買い手の双方の判断に大きい影響を及ぼすことが多く、対象価額の公正性を担保する手段として、専門家による株価算定が必要となる場合があります。
まとめ
非上場会社の株価算定が必要とされるのは、この他にもいろいろなケースがあります。会社の株式の価値の算定方法も、対象会社の状況や案件の目的などで異なります。客観的な市場価格が無い非上場会社の株価算定について、独立した第三者としての立場から、専門性、客観性、役割を果たすことが期待されると考えます。
M&Aや事業承継、株価に関する裁判や係争問題、経営戦略の検討など、重要な場面で株価算定が行われることがあります。株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたらご相談ください。