ブログ

裁判目的の株価算定書を作成する手順とは。必要な書類やスケジュール、費用の目安について解説

非公開会社の株式の価値が争点となり、裁判に至るような案件では、自身が考える株価や事業価値の正当性を主張するための裏付け資料の提示が必要になります。裁判目的の株価算定書について、以下でご説明します。

裁判目的の株価算定書の作成を専門家へ依頼する背景

上場会社なら証券市場の相場で株価が示されていますが、非上場会社には客観的な市場価格がありません。

非上場会社の株価が争点になり、非上場会社の株式を譲渡する際の売り手と買い手の協議で話がまとまらず弁護士や法律事務所が関与し、裁判になる場合はあります。

こうした場合、売り手及び買い手の弁護人、裁判所など複数の関与者が検討するために株価算定書を提示します。株価算定書には、対象会社の評価額だけではなく、対象会社の評価の概要、選択した評価方法の合理性、計算過程を記載することが必要です。この文書は、依頼者側と依頼者側の弁護人だけではなく、相手側、相手側の弁護人、裁判所に提出され、会社法に照らして裁判上の公正な価格が検討されることになります。

売り手又は買い手の当事者自身が主張する論理と結論を整理して文書にするために、対象会社の公正な株価を記載した株価算定書の提示を専門家に依頼することが検討されます。

なお、裁判では弁護人となる弁護士、法律事務所が中心となって進めることから、株価算定を依頼した専門家との間では意思疎通を図りつつ連携して取り組んでいくことが一般的です。

株価算定書とは

株価算定書とは、評価対象企業から独立した第三者の立場の専門家が、対象会社の株価の評価額、評価手法、計算過程を文書で示したものです。

株価算定の内容や利用方法は個々の事案によって異なるのですが、株価算定書に記載する項目は特に異なるわけではなく、概ね下記のとおりです。

  • 対象会社の概要(会社の商号、事業内容、役員、株主)
  • 株価算定の目的
  • 株価算定の基準日
  • 責任限定事項
  • 株価算定についての概要

-株価算定の各手法の説明

-対象会社の経営状況(経営環境、業績)

-株価算定で用いる手法の検討

-対象会社の株価の計算過程

-結論、1株当たりの評価額

裁判目的の株価算定の報酬

株価算定自体が案件によって目的や背景が異なるため株価算定の費用を一概に示すことは難しいですが、弊社の場合、裁判目的であれば、評価対象が年商10億円以下の中小企業の場合、報酬の目安は100万円(消費税別)です。

株価算定の費用の詳細については、下記でご確認いただけます。

裁判目的の株価算定に必要な資料

株価算定には、一般的には、法人の登記簿謄本や直近数年分の決算関係資料の準備が必要です。しかし、案件によっては、対象会社の今後の事業計画書が必要となる場合もありますし、特に対象会社が重要な不動産を保有するなら固定資産税課税明細書が必要となる場合もありますので、一概には必要資料の範囲を確定できないという面があります。

株価算定の必要書類について、すべての案件で常に必要となるものと、個々の案件によって必要となるものに分けると下記の通りです。

一般的に必要な資料

・評価対象会社の履歴事項全部証明書

・評価対象会社の決算書(直近3~5年分)

・評価対象会社の税務申告書(直近3~5年分)

・評価対象会社の勘定科目明細書(直近3~5年分)

個々の案件によって別途必要になる場合がある資料

・経営計画書、事業計画書(将来の収益獲得見込やキャッシュ・フロー予測で必要な場合)

・保有不動産の固定資産税課税明細書(重要な不動産の含み損益がある場合)

 ・滞留在庫、不良在庫のリスト(在庫の評価の検討が必要な場合)

 ・従業員の退職金に関する資料(退職給付引当不足額の検討が必要な場合)

  など

裁判目的の株価算定のスケジュールについて

裁判目的の場合は、基本的には、自身が考える金額と論拠の正当性を主張する裏付けとして専門家へ株価算定書の作成を依頼します。こうした裁判目的の株価算定書は、自身と相手方の他に、自身と相手方の双方の弁護士、裁判所が査閲して検討されることが想定されます。

株価算定を専門家に依頼する場合、依頼してから最終の成果物である株価算定書を入手するまでにある程度の時間が必要です。

裁判のスケジュールや関係者へ株価算定書を提示するタイミングを考慮して株価算定を依頼することが必要です。

株価算定の必要書類を入手しなければ株価算定の検討を進めることができないので、対象会社側のほうで株価算定の必要書類の準備の状況を考慮することが必要です。

株価算定を依頼してから完了するまでの期間は、案件規模、株価算定の複雑性、評価対象会社側の資料等の準備の状況の他に依頼する先によっても異なりますが、弊社では2~4週間程度を目安としています。

裁判目的の株価算定の手順

裁判目的の株価算定を専門家へ依頼してから株価算定書を入手するまでの一般的な手順は、下記の通りです。

株価算定の手順 その1 ご相談及び受嘱の検討

まず、依頼者から株価算定の概略について、電話、メールなどで連絡を受けるとことから始まります。

ここで、依頼者が株価算定を必要としている背景、株価算定の目的、最終的に提示する株価算定書がどのような形で利用されるか、をお聞きします。

そして、裁判目的の株価算定の業務として受嘱できるかどうかを判断して依頼者へ回答します。

株価算定の手順 その2 情報収集及び準備資料の依頼

裁判目的の株価算定を受嘱することが決まれば、対象会社の株価算定に必要な情報収集を進めます。

依頼者に対して準備資料のリストを提示して、評価対象会社の履歴事項全部証明書、直近数年分の決算書・税務申告書・勘定科目明細の手配を依頼します。

準備できた資料を査閲し、必要に応じて追加で資料を依頼する他に、対象会社について質問します。

株価算定の手順 その3 対象会社の実態評価と株価算定書の提示

対象会社の経営の実態を評価して株価算定するにあたり、株価算定の複数ある評価方法のうちどの評価方法を選択するのか、また、その評価方法を選択する論拠と最終的な株価算定の結論を導きます。

この流れを文書化した株価算定書を提示することにより、裁判目的の株価算定の専門家が、株価算定の結論である対象会社の株式の評価額だけではなく、どのような論理に基づいて、どのような評価手法を用いて、どのような計算を行ったかが整理されます。

裁判目的の株価算定における代表的な評価方法

株価算定には多くの手法があり、大きくは、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに分けられます。これらについては日本公認会計士協会が公表しているガイドラインに示されています。

インカム・アプローチによる株価算定

インカム・アプローチは、今後において評価対象会社が獲得することが見込まれる利益やキャッシュ・フローに基づいて株価算定を行う手法です。

インカム・アプローチには、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)、配当還元法、利益還元法などの評価法があり、このうち実務ではディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)がよく利用されます。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)は、資産が生み出すキャッシュ・フローの割引現在価値をもって、その理論価格とする方法です。

マーケット・アプローチによる株価算定

マーケット・アプローチは、上場している同業の会社や近似した過去の取引事例など、評価対象会社と類似した会社や事業または取引事例を勘案して株価算定を行う手法です。

マーケット・アプローチには、市場株価法、類似上場会社法(マルチプル法)、類似取引法、取引事例法などの評価法があり、このうち実務では類似上場会社法(マルチプル法)がよく利用されます。

類似上場会社法(マルチプル法)は、評価対象と類似した上場会社の市場株価、利益、EBITDA、純資産等の財務指標から算出された倍率(マルチプル)を適用して算定する方法です。

ネットアセット・アプローチによる株価算定

ネットアセット・アプローチは、評価対象会社の貸借対照表上の純資産に着目して株価算定を行う手法です。

ネットアセット・アプローチには、簿価純資産法、時価純資産法などの評価法があり、このうち実務では時価純資産法がよく利用されます。

時価純資産法は、評価対象となる企業または事業の資産・負債のすべてを時価に置き換えて純資産を評価する方法です。

適切な評価方法の選択について

株価算定が必要とされる背景は、個々の案件により、様々です。評価対象会社の状況についても、創業して期間が短い場合もあれば業歴が長い場合もあり、今後の事業展開で将来の利益獲得が見込まれる場合もあれば見込みが薄い場合もあり、様々です。

株価算定は、一律の計算式に当てはめて機械的に答えを出すようなものではなく、その案件ごとに、上述のインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの特徴を踏まえたうえで、適切な評価方法の選択を検討します。また、案件により、単独の評価法を適用する場合もあれば、複数の評価法を併用する場合も折衷する場合もあります。

株価算定では、適切な評価方法を選択するにあたり、なぜその評価方法を選択することが合理的と判断したのか理由を説明することが必要であり、株価算定書に記載します。

裁判目的の株価算定に関する留意事項

そもそも株価算定は、必要とされる目的や背景が事案によって異なるばかりか、評価の対象会社の経営状況や特性も異なるため、一概に言い切れない部分はありますが、株価算定が会社の株式の価値を算定することには変わりありません。

しかし、特に裁判目的の株価算定においては、下記のような点に留意が必要です。

  • 個々の案件により、株価算定書に要求される評価の内容が異なり、どの評価手法が妥当か検討して当該評価方法に基づいた株式価値又は事業価値を算定する必要がある。
  • 裁判目的の株価算定書は、相手方の評価者、弁護士、裁判所側が査閲し、様々な点で検討され、批判や意見を受けることが想定される。
  • 弁護士と評価者がコミュニケーションをとり、株式価値又は事業価値の評価についての考え方が一致すれば、首尾一貫した主張が可能となる。
  • 株価算定は単に数字を計算式に入れて機械的な計算をするわけではなく、案件ごとに複数の評価方法から適切な評価方法を選択したうえで、選択理由の合理性の説明が必要です。また、株価算定を行った後で何らかの問題が生じて思わぬ損害が出てしまうことを避けるべきです。従って、依頼先は、公認会計士と税理士の資格を保有しており、株価算定の専門知識、ノウハウがあるところにすべきです。

裁判目的の株価算定に関する事前の相談

裁判目的の株価算定を専門家へ依頼することを検討する際、依頼者としても依頼者側の弁護人としても、事前に株価算定の過程や結果を可能な限り把握しておきたい、という場合があります。また、どのようなタイミングで専門家へ依頼すればよいのか、株価算定を依頼してから完了するまでの期間としてどれくらいかかるのか、株価算定の必要書類の状況なども確認しておきたい場合があります。

弊社では、事前に問合せいただき、株価算定を必要とする理由や案件の背景、対象会社の経営状況などをお聞かせいただければ、可能な範囲でご説明いたします。

まとめ

非公開会社の株式の価値が争点となり、裁判に至るような案件の株価算定についてご説明しました。

裁判では、自身が考える株価や事業価値の正当性を主張するための裏付け資料となる株価算定書の提示が必要になります。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

関連記事

  1. 株価算定の方法~適切な評価方法の選択時の留意点
  2. 【株価算定事例】不動産管理業の会社の時価純資産法による評価
  3. 株価算定の方法 ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)…
  4. 電卓を使って計算するビジネスマン 株価算定の方法~類似業種比準価額方式(国税庁)について
  5. 代表的な株価算定の方法~案件によって異なるアプローチ
  6. 株価算定にかかる料金目安
  7. エクセルを使ったディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)…
  8. 株価算定の方法 ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)…
PAGE TOP