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MBOにおける株価算定の裁判例(旧CC社案件)

株式算定が必要となるタイミングの一つに、「MBOを実施するとき」が挙げられます。MBOは、経営陣が自社の株式や事業部門の一部を買収するというM&Aの一種です。今回は、株式の価値を巡る多数の裁判例の中から、旧CC社案件についてご紹介します。

旧CC社案件の概略

旧CC社は、映像や音響のレンタルの事業を運営する上場会社でした。

2011年2月に旧CC社は、旧CC社の創業者社長が100%の株式を保有する旧MM社が旧CC社の株式を@600円で公開買付する旨を公表しました。創業者社長がMBOをすることにより、旧CC社は上場廃止にすることを意味します。

旧CC社の株式の多くは実質的には創業者社長が保有していたところ、旧CCの株主XはこのMBOに反対し、旧CC社に対して株式を公正な価格で買い取るよう請求しました。株主Xは、@779円を公正な価格と主張しました。

2011年6月の株主総会での承認を経て、2011年7月22日に上場廃止となりました。

2012年4月13日の大阪地裁では、公開買付公表前1ヵ月間の市場株価の終値の平均値に、MBOを前提としたDCF法で算定した株式価値を考慮して、@649円と決定しました。

旧CC社案件における、大阪地裁の見解

・このMBOは、旧CC社の企業価値の向上を図ることを目的として非公開化にするということからみれば、ナカリセバ価格とMBOの実施によって反対株主が享受する増加価値分配価格を合算して公正な価格を算定すべきである。

・公正な価格は、①MBOが行われることがなければ有していた価格すなわちナカリセバ価格と、②MBOによって企業価値の増大が期待される部分のうち反対株主側が享受してしかるべき部分すなわち増加価値分配価格とを合算して算定する。

・①のナカリセバ価格は、MBOが行われることを織り込んでいない公開買付公表前1ヵ月間の市場価格の終値の平均値@469円とする。

・②の増加価値分配価格は、(ⅰ)MBO実施後の増大が期待される旧CC社の企業価値を前提とした株式価値から、ナカリセバ価格を差し引いた、(ⅱ)MBOの実施によって増大が期待される価値、を1対1で買収者と反対株主に分配したうち反対株主に分配される株式価値@180円とする。

・(ⅰ)は、DCF法による評価方法が合理的であり、@830円が相当である。

・(ⅱ)は、上記(ⅰ)の@830円から上記①の@469円を差し引いた@361円が相当である。

・公正な価格は、①の469円と②の180円を合算した@649円である。

まとめ

会社の株式の価値が争点となった裁判例として、旧CC社案件についてご紹介しました。

この事案では、MBOを公表した時の公開買付価格@600円を不服とした少数株主が問題提起した結果、大阪地裁の判決としては@649円で決定して区切りがついています。この結果からみれば、申立人となった少数株主としては、裁判を提起したことに意義はあったという捉え方ができるかとは思われます。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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