ブログ

少数株主の立場は?非上場会社の株価算定の裁判例(旧MKS社案件)

非上場会社の株式は、主に会社の経営に支配力を持つ支配株主と、それ以外の少数株主で構成されています。支配株主が株式の買い主となる場合、少数株主の視点も踏まえた算定手法を検討する必要があります。今回は、非上場会社の株式の売買価格を巡る多くの裁判例の中から、旧MKS社案件についてご紹介します。

旧MKS社案件の概略

旧MKS社は、昭和16年に設立された工業用ゴム製品の製造及び販売を主たる目的とした非上場会社です。

旧MKS社は、直近の売上高は約60億円で推移し、代表取締役Oが実質的に支配していました。Oは、旧MKS社の取締役会の承認を経ずに旧MKS社から多額の金銭を借り入れたなどで、旧MKS社の取締役会決議で代表取締役から解任され、株主総会決議で取締役らが解任されました。

旧MKS社の議決権約26%を保有するMHDは、Oの保有する旧MKS社の株式を譲り受けることの承認請求を旧MKS社へ送付したが、旧MKS社はこれを承認せず、旧MKS社が譲り受けることを主張して売買価格が争われました。

旧MKS社案件における、売り手側MHDの主張

・DCF法によれば、@5,481円~@6,097円と算定される。

・純資産価額方式によれば、@4,052円と算定される。

・DCF法と純資産価額方式を、1対1で加重平均した@4,767円~@5,075円の中位数である@4,921円以上が売買価格として相当である。

旧MKS社案件における、買い手側旧MKS社の主張

・DCF法によれば、@2,038円~@2,640円と算定される。

・ゴードンモデル方式によれば、@376円~@447円と算定される。

・DCF法とゴードンモデル方式を、1対1で加重平均した@1,207円~@1,543円の中位数である@1,375円が売買価格として相当である。

旧MKS社案件における、裁判所の見解

・旧MKS社を継続企業と認識した評価手法としては、DCF法を採用することが合理的と考えられる。

・旧MKS社の直近3年の配当性向は約16%であり、旧MKS社が非上場会社ではあっても他の上場会社の配当性向を比較して特段の不合理さは無い。よって、配当還元方式のゴードンモデル方式を採用することは合理的と考えられる。

・売り手側からみれば、株式の売却は投下資金の回収であり、これまで売り手が受領してきた利益配当請求権と今後の残余財産配当請求権を換金するという捉え方ができる。本件の場合は旧MKS社の事業が今後も継続することを前提とすれば、配当還元方式が合理的な評価方法と考えらえる。

・買い手側からみれば、旧MKS社自体が事業活動を今後も継続していくことから、企業の動的な価値を示すDCF法が合理的な評価方法と考えられる。

・本件の株式の買取価格では、株式の売買において売り手と買い手の交渉力が対等ということを前提に評価すべきである。売り手側の少数株主にとっての配当還元方式のゴードンモデル方式と、買い手側の支配株主にとってのDCF法を、1対1で折衷して売買価格を決定する。

・買い手側の算定したDCF法による評価額@2,038円~@2,640円は相当であり、ゴードンモデル方式による@376円~@447円も相当である。従って、本件の株式の1株当たりの売買価格としては、@1,375円と決定する。

まとめ

会社の株式の価値が争点となった裁判例として、旧MKS社案件についてご紹介しました。

この事案では、少数株主にとっての株式価値と支配株主にとっての株主価値を対等とみて、裁判所は、配当還元方式のゴードンモデル方式とDCF法を1対1の割合で評価額を算定しています。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

関連記事

  1. DCF法による株価算定の裁判例(旧K社案件)
  2. 複雑な条件が絡む株価算定の裁判例(旧TC社案件)
  3. 約650億円の損失を招いた株価算定の裁判例(旧TH社案件) その…
  4. 株価算定手法の組み合わせ例~株価算定の裁判例(旧SE社案件)
  5. 配当還元方式が採用された株価算定の裁判例(旧D社案件)
  6. 収益還元方式を用いた株価算定の裁判例(旧DC社案件)
  7. 株価算定手法の選び方~株価算定の裁判例(旧MYJ社案件)
  8. 複数手法を用いた株価算定の裁判例(旧FD社案件)
PAGE TOP