株価算定で適切な評価方法を選択するにあたっては、様々な評価方法の一般的な特徴を踏まえて案件ごとに検討するのですが、さて、どういったことに留意すべきでしょうか。答えは、「論理が必要」ということです。
案件ごとに異なるとはいえ、様々な評価方法のそれぞれの一般的な特徴からみればある程度の傾向はみられますし、なぜその評価方法を合理的と考えたのか理由を説明することが必要です。留意すべきポイントについて一概に示すことは難しい面がありますが、対象会社の状況によってある程度の傾向はみられますので、下記では例示を解説いたしますのでご覧ください。
留意点の具体例
例1 成長企業、ベンチャー企業
創業してからの期間が短い企業では、たとえ業績が低調で純資産が小さくても、将来の成長性を期待されることがあります。過去の決算書上の純資産の数値を利用したネットアセット・アプローチでは、対象会社の将来の収益獲得能力を反映した適切な評価を行うことが困難かもしれません。対象会社の将来の利益やキャッシュフローを考慮し、インカム・アプローチを採用してディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)の選定を検討する場合があります。
例2 事業の継続
今後、廃業や清算、事業活動の停止が予定されるような企業では、将来の収益獲得よりも、一定の時点での純資産の価値が重視される場合があります。一般的にはインカム・アプローチとマーケット・アプローチは企業の事業活動が継続することを前提とした評価の手法であり、ネットアセット・アプローチの選定を検討する場合があります。
例3 相続、贈与
対象会社の株式が相続や贈与の対象になる場合は、国税庁が公表する財産評価基本通達に基づいて株価算定を行います。対象会社を大会社、中会社、小会社のいずれかに区分して、類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式によって評価します。
例4 無形資産、のれん
ブランド力、営業権、知的財産など、決算書に資産として計上されていない無形資産を有する企業では、こういった無形資産に基づいた今後の収益獲得が期待されるということも考慮した評価を行う場合があります。ネットアセット・アプローチでは一定の時点での評価を行うため営業権の価値が評価されないことがあるので、今後の収益獲得として期待される部分を評価するためにインカム・アプローチを採用してディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)などの選定を検討すべきと考えます。
まとめ
株価算定の評価方法の選択には、案件によって異なるため一概に言えないとはいうものの、「論理が必要」となります。なぜ、その評価方法を選択したのか、ということです。上記は一部の例示にすぎませんが、株価算定の論理を考えるにあたって参考にしていただければ幸いです。
M&Aや事業承継、株価に関する裁判や係争問題、経営戦略の検討など、重要な場面で株価算定が行われることがあります。株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。