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公認会計士による株価算定とは?税理士への依頼との違いやメリットについて

公認会計士による株価算定とは、どのようなものなのでしょうか。公認会計士に依頼する背景、概要を中心として、以下でご説明します。

株価算定を公認会計士へ依頼する背景

株価算定は、会社の株式の価値を算定することです。

上場会社の場合は証券市場の株価がありますが、非上場会社には客観的な市場価格が無いので株価算定が必要となります。

株価算定は案件によって背景や目的が異なり、株価算定が必要となる場合として様々なケースがあります。例えば、第三者割当増資、非上場のオーナー系会社での親族間の株式譲渡、非上場会社の株式の買い取り裁判や係争、M&A、相続及び贈与といった時に株価算定が必要となりますが、評価の対象会社又は評価の対象会社の株主が、何らかの重要な局面を迎えていることが多いといえます。

株価算定では非上場会社の企業価値を評価して複数ある評価手法を駆使して算定するにあたり、複雑で専門性が高く、株価算定には特有のノウハウが必要です。株価算定の依頼者が何らかの重要な局面を迎えていることからみても、株価算定で思わぬ失敗を起こして損害を被ることは回避すべきです。

株価算定を依頼する相手先として、保有資格、専門性、ノウハウなどを考慮し、公認会計士、税理士、業者が想定されるのですが、公認会計士に依頼する意義について以下でご説明します。

公認会計士の株価算定

公認会計士の株価算定の概要

一般的には、日本公認会計士協会から公表されている経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」をふまえて、対象会社の純資産や利益や経営などの実態を総合的に評価します。

株価算定には多くの手法があり、大きくは、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに分けられます。

(ⅰ)インカム・アプローチによる株価算定

インカム・アプローチは、今後において評価対象会社が獲得することが見込まれる利益やキャッシュ・フローに基づいて株価算定を行う手法です。

インカム・アプローチには、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)、配当還元法、利益還元法などの評価法があり、このうち実務ではディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)がよく利用されます。

(ⅱ)マーケット・アプローチによる株価算定

マーケット・アプローチは、上場している同業の会社や近似した過去の取引事例など、評価対象会社と類似した会社や事業または取引事例を勘案して株価算定を行う手法です。

マーケット・アプローチには、市場株価法、類似上場会社法(マルチプル法)、類似取引法、取引事例法などの評価法があり、このうち実務では類似上場会社法(マルチプル法)がよく利用されます。

(ⅲ)ネットアセット・アプローチによる株価算定

ネットアセット・アプローチは、評価対象会社の貸借対照表上の純資産に着目して株価算定を行う手法です。

ネットアセット・アプローチには、簿価純資産法、時価純資産法などの評価法があり、このうち実務では時価純資産法がよく利用されます。

(ⅳ)適切な評価方法の選択について

株価算定は、一律の計算式に当てはめて機械的に答えを出すようなものではなく、その案件ごとに、上述のインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの特徴を踏まえたうえで、適切な評価方法の選択を検討します。また、案件により、単独の評価法を適用する場合もあれば、複数の評価法を併用する場合も折衷する場合もあります。

株価算定自体が案件ごとに異なるものですから一概に言いきれない部分はありますが、それぞれの評価方法には特徴があり、対象会社の将来の業績やキャッシュ・フローに着目する場合はインカム・アプローチを選択、評価対象会社と類似した上場会社の財務数値に着目する場合はマーケット・アプローチを選択、評価対象会社の純資産に着目する場合はネットアセット・アプローチを選択する場合があります。

税理士の株価算定と、公認会計士の株価算定との違い

一般的には、税理士の株価算定では、財産評価基本通達に沿った相続税・贈与税の申告書作成及び納付を目的として、評価対象の非上場会社の株式の評価額を算定します。税理士が作成する申告書一式の中に、評価対象会社の株価算定書が別表として含まれます。将来の相続税・贈与税を想定しつつ、準備することを目的として、対象会社の株式の評価額の試算が行われる場合もあります。

一般的には、公認会計士の株価算定では対象会社の経営の実態を総合的に勘案して評価するのに対し、税理士の株価算定では財産評価基本通達に沿った評価額の計算が行われます。

公認会計士や税理士ではない業者の株価算定と、公認会計士の株価算定との違い

上記の公認会計士、税理士の他に、M&Aで会社を譲渡する案件に金融機関(銀行、証券会社)やM&A仲介会社などの業者が関与する場合があります。こうした業者は、一般的には、対象会社の株価の目安を計算して取引当事者へ伝えることはありますが、通常は、本来的な意味合いでの株価算定の業務を請けることは想定していません。従って、文書で株価算定書を提示するのではなく、対象会社の株式の評価額を口頭又は数枚の紙面で伝えることが多いです。

公認会計士に株価算定を依頼するメリット

株価算定を依頼する相手先として、公認会計士に依頼するメリットは下記の通りです。

公認会計士に株価算定を依頼するメリット その1 資格

現状では、株価算定について資格制度は導入されていません。よって、株価算定を業務として請ける側には、資格が必須の要件となっていません。しかし、一般的には株価算定を担当した人の資質や信頼性が問われることに留意が必要です。

例えば、弁護士や法律事務所が関与し、裁判に発展するような案件では、弁護人、相手方、裁判所が株価算定書を読みますし、株価算定の担当者の資質は確認されます。親族間で非上場株式を譲渡した場合の評価額の合理性が問題になる案件であっても、重要なM&A案件の譲渡価額であっても、やはり株価算定の担当者の資質や信頼性が問われることは想定しておく必要があります。

株価算定を依頼した後に、仮に、株価算定書が裁判に通用しない、など思わぬところで失敗して損害を被ることを避けるためには、資格保有者に依頼すべきです。

株価算定には資格は必須の要件ではないとはいうものの、株価算定の担当者の資質、信頼性、責任を考慮すれば、公認会計士の資格保有者に依頼すべきです。

公認会計士に株価算定を依頼するメリット その2 専門性

株価算定は、単純で機械的な計算をするというものではなく、複数ある評価方法の中から適切な評価方法を選択し、その選択の理由には論理が必要となります。案件によっては、対象会社の経営状況の見通しが複雑な場合もありますし、判断や見解が複雑な場合もありますから、誰でも容易にできるというわけではありません。

株価算定では、日本公認会計士協会から公表されている「企業価値評価ガイドライン」をふまえて対象会社の純資産や利益や経営などの実態を総合的に評価しますので、専門性ということを考えれば公認会計士に依頼すべきです。

公認会計士に株価算定を依頼する場合の報酬

株価算定自体、案件によって背景や目的が異なるばかりではなく、対象会社の経営状況も異なります。よって、株価算定の報酬を一律に示すことは難しく、案件の内容や依頼先によってある程度の開きが生じます。

弊社の場合、株価算定の料金は案件別でご相談させていただいておりますが、下記のとおりです。

・評価対象が年商10億円以下の中小企業の場合で、報酬の目安は、50~100万円(消費税別)

・裁判目的であれば、評価対象が年商10億円以下の中小企業の場合、報酬の目安は、100万円(消費税別)

公認会計士に株価算定を依頼する場合のスケジュール

株価算定を依頼してから最終の成果物である株価算定書を入手するまでにある程度の時間が必要です。

株価算定に必要な資料や情報の提供から始まり、株価算定の判断過程と結論の最終の文書化に至るまでの期間は、案件の規模や複雑性などで異なりますが、弊社では2~4週間程度を目安としています。

公認会計士による株価算定書

株価算定書は、株価算定の専門家が、企業から独立した第三者の立場から、対象会社の株価の評価額、評価手法、計算過程について記載した文書です。

株価算定は、案件によって、対象会社の経営状況も株価算定を必要とする背景も異なりますが、株価算定書の記載項目はある程度定型化されます。

公認会計士による株価算定書には、下記の項目が記載されています。

  • 対象会社の概要(会社の商号、事業内容、役員、株主)
  • 株価算定の目的
  • 株価算定の基準日
  • 責任限定事項
  • 株価算定についての概要(株価算定の各手法の説明、対象会社の経営状況、株価算定で用いる手法の検討、対象会社の株価の計算過程、結論すなわち1株当たりの評価額)

公認会計士による株価算定の事前の相談について

株価算定を公認会計士へ依頼することを検討する際、事前に株価算定の過程や結果を可能な限り把握しておきたい、という場合があります。

弊社では、事前に問合せいただき、株価算定を必要とする理由や案件の背景、対象会社の経営状況などをお聞かせいただければ、可能な範囲でご説明いたします。

まとめ

公認会計士による株価算定について、依頼する背景や概要を中心にご説明いたしました。

日本公認会計士協会の公表するガイドラインに沿って、対象会社の経営の実態を総合的に評価して、株価算定書を提示します。

株価算定が必要となるのは様々な場合がありますが、評価の対象会社又は評価の対象会社の株主が、何らかの重要な局面を迎えていることが多く、そもそも株価算定の専門性が高く複雑なものです。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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