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【株価算定の流れ】株価算定の手順やスケジュール

株価算定は、どのようにして進められるのでしょうか。株価算定の手順、報酬、スケジュールを含めて以下でご説明します。

株価算定を専門家へ依頼する背景

株価算定とは会社の株式の価値を算定することであり、会社の株式や事業の売買時の取引金額の決定、裁判で会社の株式や事業の価値を主張するときの金額の裏付け、税務処理や会計処理での評価額の計算などを目的として行われます。

株価算定が必要となる場合としては、様々なケースがありますが、評価の対象会社又は評価の対象会社の株主が、何らかの重要な局面を迎えていることが多いといえます。例えば、第三者割当増資、非上場のオーナー系会社での親族間の株式譲渡、非上場会社の株式の買い取り裁判や係争、M&A、相続及び贈与といった時には株価算定を専門家へ依頼して株価算定書を入手することが必要となります。

株価算定は、なぜ必要になるのか

株価算定の手順

株価算定を専門家へ依頼してから、株価算定書を入手するまでの手順は下記の通りです。

株価算定の手順 その1 ご相談及び受嘱の検討

まず、依頼者から株価算定の概略について、電話、メールなどで連絡を受けるとことから始まります。

ここで、依頼者が株価算定を必要としている背景、株価算定の目的、最終的に提示する株価算定書がどのような形で利用されるか、をお聞きします。

そして、株価算定の業務として受嘱できるかどうかを判断して依頼者へ回答します。

ただし、実際のところはこうした初期の時点で株価算定の事前相談も含めて依頼者と協議検討することは多いです。スケジュール、報酬の他に、状況によっては株価算定で選択する評価手法と最終的な株価の結論の見込みや大枠の方向性も協議することがあります。

株価算定の手順 その2 情報収集及び準備資料の依頼

株価算定を受嘱することが決まれば、対象会社の株価算定に必要な情報収集を進めます。

依頼者に対して準備資料のリストを提示して、評価対象会社の履歴事項全部証明書、直近数年分の決算書・税務申告書・勘定科目明細の手配を依頼します。

準備できた資料を査閲し、必要に応じて追加で資料を依頼する他に、対象会社について質問します。

株価算定の手順 その3 対象会社の実態評価と株価算定書の提示

対象会社の経営の実態を評価して株価算定するにあたり、株価算定の複数ある評価方法のうちどの評価方法を選択するのか、また、その評価方法を選択する論拠と最終的な株価算定の結論を導きます。

この流れを文書化した株価算定書を提示することにより、株価算定の専門家が、株価算定の結論である対象会社の株式の評価額だけではなく、どのような論理に基づいて、どのような評価手法を用いて、どのような計算を行ったかが整理されます。

株価算定書の詳細については、下記でご確認いただけます。

株価算定書のひな型 記載する項目と例

株価算定を依頼する場合の報酬について

株価算定自体、案件によって背景や目的が異なるばかりではなく、対象会社の経営状況も異なります。よって、株価算定の報酬を一律に示すことは難しく、案件の内容や依頼先によってある程度の開きが生じます。

弊社の場合、株価算定の料金は案件別でご相談させていただいております。弊社がこれまで受嘱してきた株価算定の対象会社の大半が年商数億円から約10億円の規模であることを踏まえ、下記のとおり弊社HPで記載しています。

・評価対象が年商10億円以下の中小企業の場合で、報酬の目安は、50~100万円(消費税別)

・裁判目的であれば、評価対象が年商10億円以下の中小企業の場合、報酬の目安は、100万円(消費税別)

 株価算定の報酬については、下記でご確認いただけます。

株価算定にかかる料金目安

株価算定を依頼する場合のスケジュールについて

株価算定を専門家に依頼する場合、依頼してから最終の成果物である株価算定書を入手するまでにある程度の時間が必要です。

株価算定に必要な資料や情報の提供から始まり、株価算定の判断過程と結論の最終の文書化に至るまでの期間は、案件の規模や複雑性などで異なりますが、ある程度のスケジュール感を示してもらえるところは株価算定の依頼先として望ましいといえます。

案件によりますが、弊社では2~4週間程度を目安としています。

株価算定を依頼する場合の事前の相談について

株価算定を専門家へ依頼することを検討する際、事前に株価算定の過程や結果を可能な限り把握しておきたい、という場合があります。こうした事前の相談に柔軟に対応してもらえるところは、株価算定の依頼先として望ましいといえます。

弊社では、事前に問合せいただき、株価算定を必要とする理由や案件の背景、対象会社の経営状況などをお聞かせいただければ、可能な範囲でご説明いたします。

株価算定を依頼する先について考慮すべき事項

考慮すべき事項 その1 資格

現状では、株価算定について資格制度は導入されていないので、株価算定を業務として請ける側には、資格が必須の要件となっていません。しかし、一般的には株価算定を担当した人の資質や信頼性が問われることに留意が必要ですから、公認会計士、税理士の資格保有者に依頼すべきです。

考慮すべき事項 その2 専門性

株価算定は、単純で機械的な計算をするというものではなく、複数ある評価方法の中から適切な評価方法を選択し、その選択の理由には論理が必要となります。案件によっては、対象会社の経営状況の見通しが複雑な場合もありますし、税務上の判断や見解が複雑な場合もあります。よって、実際のところは株価算定には専門性が必要であり、専門知識やノウハウが有るところに依頼すべきです。

考慮すべき事項 その3 独立性

公認会計士が株価算定を請ける場合、利益相反の関係を排除して第三者の立場から客観的な評価をすることが前提となります。株価算定の目的にもよりますが、依頼する先との間での利害関係、独立性の保持に留意することが必要です。

株価算定の手法

株価算定には多くの手法があり、大きくは、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに分けられます。これらについては日本公認会計士協会が公表しているガイドラインに示されています。

インカム・アプローチによる株価算定

インカム・アプローチは、今後において評価対象会社が獲得することが見込まれる利益やキャッシュ・フローに基づいて株価算定を行う手法です。

インカム・アプローチには、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)、配当還元法、利益還元法などの評価法があり、このうち実務ではディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)がよく利用されます。

インカム・アプローチは、評価対象会社が将来獲得することが期待される収益の見込みを反映した評価を行うものですが、市場価格や純資産といった客観的な数値や前提条件に基づいた評価を行うわけではありません。

マーケット・アプローチによる株価算定

マーケット・アプローチは、上場している同業の会社や近似した過去の取引事例など、評価対象会社と類似した会社や事業または取引事例を勘案して株価算定を行う手法です。

マーケット・アプローチには、市場株価法、類似上場会社法(マルチプル法)、類似取引法、取引事例法などの評価法があり、このうち実務では類似上場会社法(マルチプル法)がよく利用されます。

マーケット・アプローチは、上場している同業の他社や近似した取引事例のように市場での取引を反映した評価を行うものですが、対象会社の将来収益獲得能力や対象会社に固有の定性的な情報を反映した評価を行うわけではありません。

ネットアセット・アプローチによる株価算定

ネットアセット・アプローチは、評価対象会社の貸借対照表上の純資産に着目して株価算定を行う手法です。

ネットアセット・アプローチには、簿価純資産法、時価純資産法などの評価法があり、このうち実務では時価純資産法がよく利用されます。

ネットアセット・アプローチは、対象会社の純資産という客観的な数値に基づいた評価を行うものですが、対象会社の将来収益獲得能力や対象会社に固有の定性的な情報を反映した評価を行うわけではありません。

適切な評価方法の選択について

株価算定は、一律の計算式に当てはめて機械的に答えを出すようなものではなく、その案件ごとに、上述のインカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの特徴を踏まえたうえで、適切な評価方法の選択を検討します。また、案件により、単独の評価法を適用する場合もあれば、複数の評価法を併用する場合も折衷する場合もあります。

株価算定では、適切な評価方法を選択するにあたり、なぜその評価方法を選択することが合理的と判断したのか理由を説明することが必要であり、株価算定書に記載します。

株価算定自体が案件ごとに異なるものですから一概に言いきれない部分はありますが、それぞれの評価方法には特徴があり、対象会社の将来の業績やキャッシュ・フローに着目する場合はインカム・アプローチを選択、評価対象会社と類似した上場会社の財務数値に着目する場合はマーケット・アプローチを選択、評価対象会社の純資産に着目する場合はネットアセット・アプローチを選択する場合があります。

まとめ

株価算定は、どのように進められるのか、についてのご説明でした。株価算定の手順は、ご相談及び受嘱の検討、情報収集、対象会社の実態評価と株価算定書の提示、となります。

株価算定が必要となるのは様々な場合がありますが、評価の対象会社又は評価の対象会社の株主が、何らかの重要な局面を迎えていることが多く、そもそも株価算定の専門性が高く複雑なため、公認会計士と税理士の資格と、株価算定についての専門知識やノウハウを保有している専門家が進めていきます。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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