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【株価算定事例】ベンチャー企業のディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価

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M&Aや事業承継、株価に関する裁判や係争問題、経営戦略の検討など、重要な場面で株価算定が行われることがあります。弊社がこれまでに裁判目的や同族間での株式譲渡取引などの株価算定の業務を受嘱し、株価算定書を作成・提出した中から事例をご紹介いたします。守秘義務等の関係で、固有名詞を伏せて要旨を簡潔に記載しますが、ご了承ください。

株価算定の業務の依頼の背景

対象の会社は医薬・製薬系の事業会社、法人2社の合弁会社で創業開始して約3年経過、発行済株式数は9,000株で親会社8,100株と合弁の相手先の法人900株の2社で保有、これまで売上高はほぼゼロで営業利益は数千万円から億を超えるマイナス、資本金は90百万円で直近決算では約3億円の債務超過です。

対象会社は、これまで、今後の本格的な操業に向けた準備を進めてきており、運転資金は親会社からの借入で調達してきました。合弁の相手先が対象会社の経営から手を引くことになり、親会社が合弁の相手先から900株を買い取って対象会社の全ての株式を保有する方向で話が進みました。

対象会社の親会社から、合弁の相手先から株式を譲り受ける際の価額の目安を提示してほしいということで、株価算定のご依頼を受けました。

対象会社の過去の決算の数値から見れば、純資産もキャッシュ・フローもマイナスなのですが、今後の収益獲得を見込んでおり、経営の安定にはある程度の長い期間が必要なことは当初から想定されています。今後次第に売上高が増加し、約5年後に黒字化、約10年後に債務超過解消を見込んだ事業計画を作っています。

採択した評価方法と株価評価の結論

上記の概略を対象会社の親会社の担当者から聞き、将来の収益獲得を評価結果に反映させる手法として、インカム・アプローチのうち、ディスカウント・キャッシュ・フロー法が最も合理的ではないかと考えました。ただし、この手法には、将来の予測や割引率の設定で不確実な部分がありますので、まず、対象会社の今後の事業計画をチェックしました。

事業計画の文書を査閲し、担当者に質問し、慎重に検討した結果、計画自体は論理的に作成されており、全体としてはある程度の想定の範囲内で進捗してるものの、対象会社の今後の売上や経費については一部補正することが必要と考えました。

本件の場合は、補正した事業計画を利用して、ディスカウント・キャッシュ・フロー法で株価算定を進めることにしました。

なお、マーケット・アプローチでは成長ステージや企業規模の面で類似した上場会社の株価を用いた対象会社の評価を行うことが困難なため、採択しませんでした。また、ネットアセット・アプローチでは長期的な視点で対象会社の将来の収益獲得能力を反映した評価を行うことが困難なため、採択しませんでした。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法による評価

対象会社の事業計画を補正した事業計画を作成し、今後の各年度のフリー・キャッシュ・フローを計算しました。フリー・キャッシュ・フローを現在価値に算定するための割引率は、負債コストと株主資本コストの加重平均資本コストを用いました。

株価評価の結論としては、1株当たり約7,000円~約15,000円と評価しました。対象会社の株式を合弁の相手先から買い取る際の目安の価額は、この評価額の中位の数値に近い額面の10,000円であろうと提示しました。

まとめ

今回の案件で、仮にネットアセット・アプローチだけを適用して時価純資産で評価すれば、債務超過であるがゆえに株価はマイナスと評価されてしまいます。ベンチャー企業の創業の初期段階での赤字や債務超過が当初からある程度想定されたものであり、今後の成長や将来の収益獲得見込を考慮した評価を行うとすれば、株価がマイナスという結論になるのは合理的とはいえません。ディスカウント・キャッシュ・フロー法で株価算定した結果、概ね額面、すなわち資本金として払い込んだ金額が目安であるという株価算定書を提出しました。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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