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買取価格に関する株価算定の裁判例(旧DS社案件)

株式を保有する会社の合併に賛成できない株主による買い取り請求の訴えにおいて、買取価格の協議が調わない場合に株価算定が求められます。今回は、株価算定が争点となった裁判例として、旧DS社案件についてご紹介します。

旧DS社案件の概略

旧DS社は、酒類及び飲料食品の卸売り等を行う非上場の会社であり、旧SM社の子会社でした。

2012年10月に旧DS社は、旧DS社と同様旧SM社の子会社である旧A社に吸収合併されて解散しました。

旧DS社の株式の約9.6%を保有する株主Xは、この吸収合併に反対し、旧A社に対して株式を公正な価格で買い取るよう請求しました。

株主Xは非流動性ディスカウントを適用しない収益還元法に基づいて@114円を主張し、旧A社は時価純資産法に基づいて@71円を主張しましたが、協議が整わず、2012年11月21日に株主Xが申立人となって裁判所へ買取価格の決定を請求しました。

2014年6月23日の札幌地裁の原々審では、非流動性ディスカウントを適用して25%減額した利益還元法に基づいて@80円と決定しました。

この決定について株主Xは非流動性ディスカウントの適用を不服とし、2014年9月25日の札幌高裁の抗告審では、非流動性ディスカウントを適用しない収益還元法に基づいて@114円とする裁判を求めて抗告を申し立てました。

2015年3月26日の最高裁では、非流動性ディスカウントを適用しない収益還元法に基づいて@106円と決定しました。

旧DS社案件における、原々審の札幌地裁の見解

札幌地裁は、非流動性ディスカウントを適用した利益還元法に基づき、@80円が公正な価格であると決定しました。

・旧DS社自体は吸収合併後に消滅するが、旧DS社の事業は旧A社に引き続き営まれており、特に旧A社が解散する予定などないことから純資産法を採用することは合理的ではない。

・旧DS社と類似する上場企業は無く、類似会社比準法を採用することは合理的ではない。

・旧DS社は配当実績がほぼ無いため配当還元法は利用できず、旧DS社の将来のフリー・キャッシュ・フローを見積もる資料が無くディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)も利用できない。しかし、仮に吸収合併がなければ旧DS社が獲得する将来利益を合理的に予測することは可能なため、収益還元法を採用するのが合理的である。

・旧DS社は、非上場であることを考慮すれば、価格のつきやすさ、売れやすさもからみて非流動性ディスカウントを考慮すべきであり、高度な専門的知識と経験の有る鑑定人が採用した25%は否定できるものではない。

旧DS社案件における、最高裁の見解

最高裁は、本件では、非流動性ディスカウントを適用した利益還元法は妥当ではなく、非流動性ディスカウントを適用しない利益還元法に基づいて@106円が公正な価格であると決定しました。

・非流動性ディスカウントで評価額が減額される理由は、非上場の株式には市場性が無く流動性が低いことにある。収益還元法は、将来期待される純利益を資本還元率で還元して株価を算定するものであり、類似会社比準法のように市場での取引価格の比較という要素は含まれていない。収益還元法で算定された株価について、この算定の要素として含まれていない市場での取引価格との比較でさらに減額することは妥当ではない。

まとめ

会社の株式の価値が争点となった裁判例として、旧DS社案件についてご紹介しました。

この事案では、非流動性ディスカウントの適用の可否をめぐり、最終的に、最高裁では適用されないという結果となりました。非流動性ディスカウントは、対象会社の企業価値を評価するにあたり、非上場会社は上場会社と比較して流動性が低いことを考慮するものです。昨今の実務で非流動性ディスカウントを適用する場合には、概ね20~30%が減額して評価されることがあります。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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