ブログ

株価算定の裁判例(旧FS社案件)について

会社の株式の価値の評価方法には多くの種類があります。株価算定を必要とする目的や背景が個々の状況によって異なりますし、評価対象会社の経営状態も異なります。会社の株式の価値を巡る多数の裁判例がある中から、今回は、旧FS社案件についてご紹介します。

旧FS社案件の概略

旧FS社は明治時代に創業され、昭和38年に法人として設立された鮮魚の卸売業を営む非上場会社です。会社の経営は順調で、売上は6~700億円で推移し、今後も継続して営業活動を長期にわたり継続することが期待できる状況でした。

旧FS社の株主Aは、旧FS社の株式の約3%を保有していました。株主Aは、昭和28年から昭和53年まで旧FS社に勤務し、この間は旧FS社の持株に対する配当を得ていました。この株主Aが、この保有する株式を譲渡することについて旧FS社へ承認を請求しましたが、旧FS社は承認せずBを買受人として指定しました。

旧商法204条ノ4に基づく価格決定の申立てを受け、昭和63年1月21日に福岡高裁は、配当還元方式を基礎とする方式により、@2325円を売買価格と決定しました。

旧FS社案件における、裁判所の見解

・配当還元方式は、配当の受領のみに期待する非支配的な立場の一般株主にふさわしい評価方法と考えられる。配当還元方式は、評価対象会社の将来の配当予想を一定の還元率で計算することから、今後の長期間の配当の予測が可能な場合には合理的と考えられる。旧FS社の場合、株主Aは長きに渡り少数の株式を保有して配当を受領していること、また、事業の継続を前提として今後の配当を予測することが可能なことから、配当還元方式は最も合理性があると考えられる。ただし、配当還元方式以外の合理的な評価方式を考慮するのが適切と考えられる。

・類似会社比準方式は、類似した上場会社の市場価格をベースにして、配当、利益、純資産を比較評価する方式である。旧FS社において、類似会社の選定が可能でかつ適切ならば、合理性はあると考えられる。

・純資産価額方式は、評価対象会社の事業の継続を前提とした旧FSには不適当と考えられる。簿価純資産ならば、帳簿上の純資産が実態と乖離していれば正しい評価ができず、時価純資産ならば、会社の清算を前提とした評価を行う点で不適当と考えられる。

・収益還元方式は、評価対象会社の将来の利益を一定の利回りで資本還元して価値を計算する方式である。実際のところは多くの会社が利益を配当に回さず内部留保に蓄積していることが多いが、旧FS社の場合は将来の利益獲得が見込めるため、合理性はあると考えられる。

・以上より、旧FS社の場合、配当還元方式を基礎として、この他に合理性が認められる類似業種比準方式と収益還元評価方式を修正要素として考慮する評価方式が最も適切と考えられる。

まとめ

会社の株式の価値が争点となった裁判例として、旧FS社案件についてご紹介しました。

この事案では、裁判所は、配当還元方式が最も合理的であるとしつつ、類似業種比準方式と収益還元方式にも合理性があることを考慮しました。配当還元方式を基礎としながら類似業種比準方式と収益還元方式を修正要素として評価額を算定しています。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

関連記事

  1. 株価算定の裁判例(旧TF社案件)について
  2. 株価算定の裁判例(旧MS社案件)について
  3. 株価算定の裁判例(旧CC社案件)について
  4. 株価算定の裁判例(旧S社案件)について
  5. 株価算定の裁判例(旧KS社案件)について
  6. 株価算定の裁判例(旧D社案件)について
  7. 株価算定の裁判例(旧SE社案件)について
  8. 株価算定の裁判例(旧DS社案件)について
PAGE TOP