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ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)の永久成長率について

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)で株価算定を行う際に、ターミナルバリューの計算では永久成長率が用いられます。永久成長率とは、何でしょうか、また、どのように計算するのでしょうか。

永久成長率の定義

永久成長率とは、ターミナルバリューを計算する際の、最終予測年度のフリー・キャッシュ・フローが一定の成長率で永続するという仮定に基づいた、毎年の成長率です。

永久成長率、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)、ターミナルバリューの関係

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)で株価算定を行う際に、評価対象会社の事業価値は、各年のフリー・キャッシュ・フローの現在価値合計額とターミナルバリューを現在価値に割り引いた合計金額として計算します。

後者のターミナルバリューは、企業が継続する前提で、事業計画の最終年度以降に生じるフリー・キャッシュ・フローを現在価値で割り引いた額の総合計値であり、永続価値、残存価値、継続価値、という場合もあります。

ターミナルバリューは、下記のように計算します。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)、ターミナルバリューの詳細については、下記をご確認ください。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)のターミナルバリューについて

永久成長率が用いられる理由

事業価値の計算式の前半部分「各年のフリー・キャッシュ・フローの現在価値合計額」は、一般的には、対象会社が作成する事業計画に基づき、対象会社が予測可能な範囲内でのフリー・キャッシュ・フローで計算します。

しかし、事業価値を計算するには対象会社が予測可能な範囲内だけでは不十分なため、事業価値の計算式の後半部分「ターミナルバリューの現在価値総額」で最終予測年度以降のフリー・キャッシュ・フローを考慮します。

なお、ターミナルバリュー自体は、対象会社として予測不可能な部分です。対象会社が事業計画を作成してキャッシュ・フローの見積計算することが困難な部分の価値を算定するわけですから、仮定計算によらざるをえません。この仮定計算では、対象会社が一定の割合で成長するという仮説や、予測最終年度のフリー・キャッシュ・フローが継続するという仮説に基づいた価値の算定とります。

永久成長率が用いられる理由は、対象会社の事業価値を算定する際のターミナルバリューの計算には将来の見積計算が困難な部分が伴うために、最終予測年度のフリー・キャッシュ・フローが一定の成長率で永続するという仮定に基づいた計算を行うからです。

永久成長率の具体的な計算について

永久成長率は、不確実性が高い将来の対象会社の成長率を見積もるものです。永久成長率は、定められた一律の数値を用いるわけでもなく、定められた計算式で機械的な計算をするわけでもありません。

永久成長率は、株価算定の案件ごとに諸条件を勘案して決定します。一般的には、対象会社の業績、所属する業界、所在地の経済成長率、所在地のインフレ率などを考慮して決定します。永久成長率の取扱いについて、下記のような例があります。

・永久成長率0%

昨今の日本経済の低成長を考慮する場合、将来の不確実性が高く成長率を見込むことが困難な場合、最終予測年度のフリー・キャッシュ・フローが継続すると仮定される場合などでは、永久成長率をゼロとすることがあります。

・永久成長率1~2%

 インフレ率を考慮する場合、対象会社の業績の伸長や対象会社の所属する業界や市場規模を考慮する場合などでは、永久成長率を1~2%とすることがあります。

永久成長率がターミナルバリュー及び事業価値に与える影響について

ターミナルバリューは、最終予測年度以降のフリー・キャッシュ・フロー、資本コスト、永久成長率を用いた仮定計算です。

仮に、フリー・キャッシュ・フローを100、資本コストを6%、永久成長率を0%とした場合のターミナルバリューは、1666となります(100÷(6%-0%)=1666)。

フリー・キャッシュ・フローと資本コストが同値で永久成長率を1%とした場合のターミナルバリューは2000となります(100÷(6%-1%)=2000)。

案件にもよりますが、多くの場合、他の数値が一定でも永久成長率が0%か1%かで、ターミナルバリューの計算結果には大きい影響が生じます。

なお、ターミナルバリューは事業価値の計算に含められているので、事業価値はターミナルバリューと同額の影響を受けます。

永久成長率の留意点について

上記のとおり、多くの場合、永久成長率をどうするかによって、対象会社のターミナルバリュー及び事業価値には大きい影響が生じます。

また、ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)の計算の性質上、多くの場合、予測期間のフリー・キャッシュ・フローよりターミナルバリューのほうが企業価値に占める割合が大きくなります。

よって、永久成長率の検討においては、計算過程や基礎数値を含め、客観性、信憑性に留意することが必要です。

まとめ

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)のターミナルバリューの計算で用いられる永久成長率についてご紹介いたしました。

永久成長率は永続的なフリー・キャッシュ・フローの成長率であり、案件ごとに諸条件を考慮して決定したうえで、ターミナルバリューの仮定計算で用いられます。多くの場合、永久成長率はターミナルバリューの計算結果にも事業価値にも大きい影響が生じるので、客観性、信憑性に留意が必要です。

ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)は株価算定の方法としてよく利用されますが、複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたらご相談ください。

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