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裁判目的の株価算定における公正な価格について

会社の株式の価値が争点となって裁判に至るような案件では、裁判所が公正な価格で決定することが基本的な流れになります。公正な価格について、以下でご説明します。

裁判所に会社の株式の公正な価格の決定が要求される場合

主として下記のような場合には、裁判所に会社の株式の公正な価格の決定が要求されます。

・非上場会社の株式には証券市場が無く、客観的な株価がありません。非上場会社の株式の売り手側と買い手側の協議で株式の売買価格が合意できず、裁判所に公正な価格の決定が要求されることがあります。

・上場会社が非上場会社となる時に、スクイーズアウトに反対する株主が現れることがあります。スクイーズアウトとは、会社の大株主が少数株主に金銭等を交付して排除することです。上場会社なので証券市場の株価は有りますが、いつの時点の株価を会社の買取価格にするか等が株式の売り手側と買い手側の協議で合意できず、裁判所に公正な価格の決定が要求されることがあります。

公正な価格の意義及び会社法上の定め

会社の株価が争点となって裁判所の裁量で会社の株価を決定するときに斟酌されるのが、公正な価格です。

会社法第785条第1項及び第806条第1項では、吸収合併や新設合併等の組織再編に反対する株主が株式買取請求権を行使する場合に、公正な価格での買い取りを請求できることが定められています。

しかし、公正な価格の具体的な計算方法や内容については、会社法その他の法令規則で定められておらず、解釈に委ねられ、事案によって異なります。

公正な価格の検討

会社の株価が争点となった時に、売り手側自身及び買い手側自身が想定する会社の株価の正当性を主張するためには、専門家から株価算定書を入手して、公平性、透明性を高めることが必要です。

裁判所は、事案ごとに株価の算定方法を検討するのですが、これまでの裁判の判例からみれば、株価は客観的価値(ナカリセバ価格)と株価上昇の期待(シナジー分配価格)で構成されると考えられます。

客観的価値(ナカリセバ価格)とは、買収等の組織再編が無かったと仮定した場合の価格を意味します。

シナジー分配価格とは、買収等の組織再編で生じるシナジー効果を反映した価格を意味します。

公正な価格を検討する際は、中小企業庁が公表している「経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン」及び日本公認会計士協会が公表している「企業価値評価ガイドライン」を斟酌することが必要です。こうしたガイドラインには多くの株価算定の手法が示されており、大きくは、インカム・アプローチ、マーケット・アプローチ、ネットアセット・アプローチの3つに分けられます。

まとめ

会社の株式の価値が争点となって裁判に至るような案件で、裁判所の裁量で決定される公正な価格についてご説明しました。

非上場会社の売買価格の決定、スクイーズアウトに反対する株主の買い取り請求の価格の決定などでは、裁判所に会社の株式の公正な価格の決定が要求される場合があります。会社法上、組織再編に反対する株主が株式買取請求権を行使する場合の公正な価格での買い取り請求が定められていますが、公正な価格の具体的な計算方法や内容は定められていません。中小企業庁や日本公認会計士協会が出しているガイドラインを斟酌して検討することは必要ですし、専門家からの株価算定書を入手して自身の想定する株価を主張できるようにすることが望ましいと考えられます。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

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