ブログ

株価算定手法の選び方~株価算定の裁判例(旧MYJ社案件)

株価算定の手法は複数あり、算定をする目的や状況によって、適切な手法が異なります。裁判所は、どのような点を考慮して株価算定方法を選ぶのでしょうか。今回は、多数の裁判事例の中から、旧MYJ社案件についてご紹介します。

旧MYJ社案件の概略

旧MYJ社は、タクシーや貸切バスを主たる目的とした非上場会社です。

旧MYJ社は、株主総会特別決議承認を得た後に、昭和61年8月に@1000で普通額面株式2万株を、特に有利な発行価額で発行しました。

旧MYJ社の株主Aは、こうした新株発行について、会社の経営支配権を確立することを目的としており、取締役に対して損害賠償を請求しました。

平成11年6月17日に大阪高裁は、損害賠償額を算定するにあたり、純資産価額方式と類似業種比準方式を一定の比率で按分して株価を算定するのが相当として、@4752円と決定しました。

旧MYJ社案件における、裁判所の見解

・配当還元方式は、会社を支配することを目的としない一般の少数株主には適合するが、本件のように経営者の意思で配当が左右されるような場合には採用すべきではない。

・収益還元方式は、将来の利益を一定の利回りで還元計算する手法である。本件のように、会社の利益の多くが内部留保に回されるような場合や、会社の利益の増加が株主の利益に直結しないような場合には合理的とはいえない。

・純資産価額方式には、簿価純資産による方法と時価純資産による方法がある。本件のような、新株発行時の適正な価額を計算するには、企業継続を前提とした時価純資産法は合理的であると考えらえれる。

・類似業種比準方式は、業種・規模・利益・配当といった面で類似した企業を選定するのが困難なところはあるが、非上場会社の株価の評価手法として広く利用されている。

・本件では、純資産価額方式と類似業種比準方式を一定の比率で按分して株価を算定するのが相当である。

・類似業種比準方式で、直近の旧MYJ社の決算に基づいて算定した株価は、@2617円であった。

・純資産価額方式で、公認会計士が作成した鑑定評価書をベースに算定した旧MYJ社の時価純資産は、@9023円であった。

・類似業種比準方式を2、時価純資産による純資産価額方式を1の割合で按分して計算した旧MYJ社の株価は@4752円である。

まとめ

会社の株式の価値が争点となった裁判例として、旧MYJ社案件についてご紹介しました。

この事案では、裁判所は、類似業種比準方式と純資産方式を、2対1の割合で評価額を算定しています。

株価算定は複雑で専門性が高いので、疑問点などございましたら弊社までご相談ください。

関連記事

  1. 収益還元方式を用いた株価算定の裁判例(旧DC社案件)
  2. 不動産の含み益はどうなる?株価算定の裁判例(旧TF社案件)
  3. 合理的な株価算定手法とは?株価算定の裁判例(旧FS社案件)
  4. 約650億円の損失を招いた株価算定の裁判例(旧TH社案件) その…
  5. 地裁では純資産価額方式、高裁ではDCF法と純資産価額方式の折衷と…
  6. 裁判例に見る株価算定手法~ディスカウント・キャッシュ・フロー法(…
  7. 複数手法を併用する際の割合は?株価算定の裁判例(旧SG社案件)
  8. 配当還元方式が採用された株価算定の裁判例(旧D社案件)
PAGE TOP